「行きつけのバー」

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1:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:09:53.62ID:7JrKbhqwa

男なら誰しもが憧れるだろうが、そう簡単には手に入らないソレ。
僕が手に入れたきっかけは、なかなかに面白いものだった。


2:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:10:16.88ID:7JrKbhqwa

大学卒業後、某メーカーの営業職に就職した僕だが、
とある日の外回りで危機的な状況に陥っていた。


3:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:10:24.02ID:jsBfudC/d

行きつけのバー閉店したわ


8:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:08.19ID:nj07lrfp0

>>3
コロナやししゃーない


4:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:10:24.47ID:ZBYj72ca0

ハライチの声で再生された


5:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:10:33.66ID:7JrKbhqwa

「ヤバイ……。う○こしたい……下痢っぽい……」


6:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:00.10ID:7JrKbhqwa

夕方を過ぎ、最後の訪問先に向かう寂れた商店街で、
僕は冷や汗をかきながらトイレを探していた。
しかし周囲はシャッターの閉じた店ばかり。
トイレを貸してくれそうな店はない。


7:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:00.76ID:wqrCtcKL0

もうオチ分かったわ


9:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:20.00ID:+C825Y1e0

ワイの行きつけのバーはバーテンが強制送還されてなくなった


10:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:28.98ID:DSIiqHwj0

誰もいないバー


11:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:11:35.12ID:7JrKbhqwa

(こうなったら路地裏でぶっ放すしかないか……)


13:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:12:05.01ID:iXKBIz+Y0

場末のスナック


14:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:12:05.09ID:7JrKbhqwa

そう思った時に目の前で店のシャッターを開ける、
年の頃60位だろうか、自分の父親と同じくらいの男性がいた。

僕はなりふり構わず、その男性に
「すみません。お腹を下してしまって、トイレを貸してはいただけないでしょうか」
と、持ちうる限り最大限の丁寧さでお願いした。すると男性は、


15:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:13:00.61ID:7JrKbhqwa

「いいけど、なんか飲んでって。ここ、バーだから」
と、真顔で答えた。


16:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:13:13.61ID:4vrlr66er

ええやん!



17:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:13:22.61ID:7JrKbhqwa

(この人、腹を下してる人間に何を言ってるんだ……)


18:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:13:54.79ID:7JrKbhqwa

内心、おかしな人に当たってしまった、と思いつつも、
「しかし、この後まだ営業先に行かなくてはいけないので、
お飲み物の代金をお支払する形ではダメでしょうか」と提案すると、


19:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:14:14.51ID:7JrKbhqwa

「じゃあ帰りに飲みに来て。ここはバーで、トイレじゃないんだ」
男性はそういうと僕を店内に手招きした。


20:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:14:30.95ID:4vrlr66er

ふむふむ


21:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:14:31.49ID:7JrKbhqwa

(そうなると、僕は帰りにここに寄らずに、そのまま帰ることもできるのに、
なんだかとても変わった人だなぁ)そう思いつつ、トイレを済ませると、
「では、帰りに寄らせてもらいます」そう言って僕は店を出た。


22:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:14:53.56ID:7JrKbhqwa

訪問先の滞在時間が延びたこともあり、約束は覚えていたけれど
面倒だから帰ろうかなとも思った。けれど、ちょっと様子を見てみよう、
そんな気になって、僕は帰りにその店の前を通った。


23:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:15:13.87ID:7JrKbhqwa

ガラスがはめられたドアをそっと覗くと、
夕方の男性が一人でカウンター内でタバコを吸っていた。
やはりというか、当然だが、この店のマスターだろう。
正直に言うと、その姿があまりにもカッコよく、様になっていて、
僕は無意識の内にドアを開けていた。


24:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:15:17.61ID:4vrlr66er

ちゃんとしたSS初めて見たかも


25:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:15:50.38ID:7JrKbhqwa

マスターは僕を一瞥すると、
「あんた、変わってるね」と無表情に言った。
(それはあなたの方では……)と思っていると、マスターはグラスを出しながら続けた。
「寄らずに帰ろうと思えば帰れた。けれどあんたはここに来た。
あんたいい人だ。今日は店を休もうと思ったけど、開けてよかったよ」
そういって丸氷を入れたグラスにお酒を注いだ。
「あんたがこの店で最初に飲む酒は、これが良い」
目の前に琥珀色より少しばかり深く落ち着いた、何とも美しい色のお酒が出された。


26:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:16:27.24ID:7JrKbhqwa

当時、酒を全く知らなかった僕は、とりあえず値段が怖くなり、
「お幾らですか?」と財布を出しながら聞いた。マスターは
「25万円」と優しく笑った。


27:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:16:33.74ID:4vrlr66er

ウィスキー?


28:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:16:35.36ID:7JrKbhqwa


29:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:16:36.39ID:c8jqTUsgd

町のスナックとかバーとか謎だよな


30:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:17:21.04ID:xUf6uBF50

イイハナシダナー



31:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:17:21.32ID:4vrlr66er

ヒェッ…
25万払ったんか?ジョーダンやったんか?


32:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:18:07.41ID:7JrKbhqwa

当時、酒を全く知らなかった僕は、とりあえず値段が怖くなり、
「お幾らですか?」と財布を出しながら聞いた。マスターは
「俺は一杯飲んでけ、と言っただけで、金をとるとは言ってない
この一杯はプレゼントだ」と優しく笑った。


33:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:18:23.33ID:7JrKbhqwa

その後、僕はこのバーに足しげく通い、色々な人と知り合った。
マスターから見ればまだまだヒヨっ子だが、大人になり、
結婚もし、いつか子供とこのバーに行きたいと思っていた。


34:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:18:46.25ID:7JrKbhqwa

そんな矢先、マスターが亡くなった。


35:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:19:17.15ID:4vrlr66er

えっ…ショック


36:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:19:17.51ID:7JrKbhqwa

いつだっただろうか、常連達でしっぽり飲んでいた夜、
マスターが「なんだかインターネットに店が載ったみたいで、
『落ち着いたバーですね。僕好きです』みたいな若造が増えた
俺はそういう客は好かないんだ。機械による巡り合わせは好かないんだ」
と、愚痴っぽく言っていたことがあった。
僕も含め、何かしらおかしな巡り合わせでこの店とマスターと縁が出来た常連達は、
必死にネットを探し、掲載元に記事を取り下げるように頼んだりした。
けれど、大半のところは「言論(表現)の自由だ」と取り合ってくれなかった。
そんな中、マスターが暫く店を休むと言った。
今思えば、あの頃から体調が悪かったのかも知れない。
そのまま復帰の知らせのないまま、常連仲間からマスターの訃報を聞いた。


37:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:19:41.34ID:7JrKbhqwa

告別式はマスターらしい、参列者の少ないものだった。
会場には見覚えのない女性が2人いて、話を聞くと離婚した元奥様と娘さんだった。
マスターは自分の話を全くしない人で、「俺は既に天涯孤独だ」と言っていたので、
我々はそれが本当だとてっきり信じていた。


38:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:20:29.68ID:4vrlr66er

そういう訃報って常連さんから別の店で聞いたりするよな…


39:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:20:41.55ID:7JrKbhqwa

火葬の待ち時間、マスターの元奥さんと娘さんが
「これを渡すように、と言われました」と僕に1本の酒を渡してきた。
何でも亡くなる少し前に、マスターが2人に、僕に渡すように言付けたそうだ。
具体的な商品名は控えるが、某日本メーカーのウイスキー(50年)と言えば、
分かる人にはその価値がわかると思う。何故こんなものを僕に、と混乱していると、
娘さんがバーで使われていた伝票を渡してきた。裏には走り書きの文字で、


40:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:21:09.15ID:7JrKbhqwa

「お前が俺を殺した」


41:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:21:27.19ID:8+24d7EUM

ヒエッ


42:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:21:33.07ID:7JrKbhqwa

そう書いてあった。


43:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:21:44.84ID:GyRK+kX7a

つまらない…つまらなくない?


45:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:22:27.83ID:7JrKbhqwa

「あの日のウイスキー。あんたにあげる」


46:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:22:35.29ID:nAWp9pr4r

なんかところどころウケ狙い寒くね?


47:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:22:59.01ID:7JrKbhqwa

そう書いてあった。
ボトルはあの日僕が飲んだ一杯から、減っていなかった。
僕は涙が止まらず、大人げなくその場に膝をついて嗚咽した。


48:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:23:26.90ID:7JrKbhqwa

「行きつけのバー」
僕に人生とは何か、人付き合いとは何か、
大人になるとはどういうことかを教えてくれた、大切な空間だ。
男なら誰しもが憧れるだろうが、そう簡単には手に入らないソレ。
僕は今後の人生において、もう行きつけのバーをつくることはないと思う。


49:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:23:41.72ID:SsqCzDtP0

くそつまらん25万とか入れんなよ


50:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:23:44.26ID:7JrKbhqwa

マスターの三回忌にあてて。最大限の感謝と愛を込めて。


51:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:24:13.80ID:4vrlr66er

普通にええ話やのに
途中挟むボケがなんともいえんな
でも楽しかったわ!


52:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:24:25.70ID:67j5fTo90

これからは緊急時は野糞するのやめてトイレ借りるわ


53:なんJゴッドがお送りします2020/11/18(水) 11:24:27.36ID:k1svlzioa

目押しで枠上に狙うバー




元スレ:https://swallow.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1605665393/
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