オーク「グオオオオ!」剣士俺「ぐっ…このままだと…」聖女「大丈夫ですか!」バッ

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1:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 15:59:24.64ID:EGO/y1Ok0

聖女「ホーリークロス!」パァツ
オーク「ブモオオオ!」
俺「あ、あれは!」
女僧兵「聖魔法十三階位、ホーリークロス。この国では使えるのは聖女様くらいでしょうね」ハァ
俺「ありがとうございました……なんとお礼を言えば」
女僧兵「そのまま頭をあげないでください」
女僧兵「本来、聖女様はあなたのような下賤な輩とは、目も合わせるべきではない子高貴な御方」
俺「は、はい……」
女僧兵「まったく、聖女様ときたら。ゴブリンとオークの争いに加担して何が変わるのですか?」

俺「……」


2:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 15:59:37.05ID:EGO/y1Ok0

聖女「…その様な言い方はないでしょう」
女僧兵「し、しかし私は、高貴な聖女様が穢れてはと!」
聖女「下がっていてください」
女僧兵「は、はい、申し訳ございません…」
聖女「大丈夫ですか?」
俺「ありがとうございました! 本当に…」
聖女「ふふ、顔をあげてください。私の部下が、とんだ失礼を…」
俺「い、いえ」
聖女「ああっ! 怪我をしているではありませんか!」
俺「あ、大したことないので…」


4:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 15:59:49.15ID:EGO/y1Ok0

聖女「ホーリーヒール!」
女僧兵「こんな男の傷を治すために、聖魔法十三階位を使うなど…」アセアセ
俺「あ、ありがとうございます。凄い、痛みがすぐにひいた…」
女僧兵「本来、司教位上の尊い御方の傷を治すためのなのに…」
俺「噂でしか知らなかったけど、本当に凄い人なんだな…八階位の魔法を使えたら一流といわれているのに…」
女僧兵「無礼なことを、この国で一番御強いお方です」
女僧兵「二年前の魔人襲撃でも、たった一人で千の魔人を追い返したのですよ」
俺(なんでお前が偉そうなんだよ)


5:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:01.08ID:EGO/y1Ok0

俺「何度も言いますけど、ありがとうございました! 俺、今日のことは一生忘れません!」スッ
聖女「あっ」ビクッ
女僧兵「は?」イラッ
俺「す、すいません、握手なんて失礼ですよね…」サッ
聖女「申し訳ございません…異性の方と触れてはいけないと、戒律がありまして」シュン
俺(可愛い…)


6:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:08.60ID:EGO/y1Ok0

女僧兵「早く行きましょう、ほら!」
聖女「…同年齢の男の人と話したのは初めてです」
聖女「また、どこかでお会いできるといいですね」ニコッ
俺「…!」ドキィ
女僧兵「聖女様っ!」


7:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:16.44ID:EGO/y1Ok0

―宿屋―
俺「聖女様聖女様…! ああ、聖女様!」シコシコ
俺「いいんですか? 中に出して! 失礼いたしますぅ!」ビュッビュッ
俺「ああ、聖女様の綺麗な白い肌に、俺の穢れた白濁が…!」ハァハァ
俺「俺は、俺はァ!」
隣室「うっせぇぞゴミ野郎!」ドンッ


8:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:19.11ID:ZMgBRPFgd

つまんないからもういいよ


9:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:52.80ID:pX+IzPl4H

イッチゴブリンなんか


10:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:00:55.83ID:EGO/y1Ok0

俺「……うう、すいません、聖女様でこのような下卑た妄想を…」ハァハァ
俺「ばれたらこれ処されないよな…。少なくともあの女僧兵は顔真っ赤にして怒りそうだが」
『…同年齢の男の人と話したのは初めてです。また、どこかでお会いできるといいですね』ニコッ
俺「……」
俺「なんだこのやるせなさ…はぁ、これが恋か…」
俺「また会えるかなぁ」ハァ


12:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:01:08.09ID:HfUr0f7sa

ノクターンならブックマーク10くらいついた


13:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:01:30.32ID:EK/hxipn0

お客さんか?
なんJは
『ワイ』
やぞ?


14:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:02:09.58ID:EGO/y1Ok0

―聖堂―
枢機卿長「ではこれより聖交の儀を執り行う!」
司教「聖女様、こちらのベッドの上に…」
聖女「……はい」ゴロン
枢機卿A「フフフ…やはり聖女様の身体はやらしいのう」
枢機卿B「むむ? なんだこの胸は?」モミッ
聖女「う…あ…」
枢機卿C「おい、うつ伏せで尻を突き出せ」
枢機卿A「では儂は口を…おい、しゃぶらんか」
聖女「……」
枢機卿A「これは神聖な儀式であるぞ!」
聖女「はい…」


16:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:03:34.61ID:7DMiwiCeM

冷凍死
若き野心にみちた科学者フルハタは、棺の中に目ざめてから、もう七日になる。
「どうしたのかなあ。もう棺の蓋を、こつこつと叩く者があってもいいはずだ」
彼は、ひたすら棺の外からノックする音をまちわびている。
棺といっても、これはわれわれの知っているあの白木づくりの棺桶ではない。難熔性のモリブデンの合金エムオー九百二番というすばらしい金属でつくった五重の棺である。また棺内は、白木づくりの棺のように辛うじて横になっていられるだけの狭さではなく、なかなか広い。天井の高い十畳敷の部屋ぐらいの広さだ。そこにベッドもあれば、冷凍機械もあり、温度調節器もあり、ガス発生器とか発電機とか信号器とかいろいろの機械がならんでいる。また、たくさんの参考文献や、そのほか灰皿や歯ブラシや安全剃刀などという生活に必要ないろいろな品物も入っている。早くいえば、研究室と書斎とを罐詰にしたようなものである。
彼フルハタは、この風変りな棺桶のなかで、すでに一千年余の冷凍睡眠をへたのである。
冷凍睡眠というのは、人間を生きたまま氷結させてしまい、必要な年数だけ、そのままにしておくことである。これはなかなかむずかしい技術で、ことに冷凍の程度をすすめてゆくスピードがむずかしい。下手をやれば、それきりで人間は永久に死んでしまうのである。うまくこれをやれば、三日後であろうと百年後であろうと、また彼フルハタの場合のように一千年後であろうと、冷凍人間の生命は保存される。そしていい頃合にこの冷凍をといて、ふたたび蘇生することができる。このときまた、冷凍している人体を融かして元に戻す技術が、なかなかむずかしいのであるが、とにかく彼フルハタの場合には、どっちも完全にうまくいった。
それもそうであろう。この若い科学者フルハタの実験は、彼一人の力によったものではなく、「一千年人間冷凍事業研究委員会」という長たらしい名の科学者団体があって、その協力によって行なわれたものである。
今もいったように、棺の中は、四角な部屋になっているが、外は球状をなしていて、どの方向からの圧力にも耐えるようになっていた。


17:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:03:47.51ID:8DhY+5td0

王都近郊の丘の上、私は絶望していた。
あれだけ居たはずの主力の正規軍が敗走し全滅してしまったからだ。
「揃いも揃って無能どもめ」
無線で拾われないように小さく悪態をつく。もっともこの混乱でその心配は無用だが。
残ったのは輜重部隊が数個、私の率いた弓兵部隊と砲兵隊、それに王都からかき集められた民兵で構成された義勇軍。
数はやや勝っているようだが、問題はそこではない。質で大負けしてるのだ。
この広い草原を弓兵に行かせるのはどう考えても無理がある。最初に視認するのは天国だろう。
部下達もそれをわかっているようで進軍する気配は無い。
義勇軍も居るがとても無理だ、その貧相な装備ゆえに後方に下げられ戦火を免れたようだが戦力にはならないだろう。
だが前線を張れるのは義勇軍しかない。先陣を切ったようだが軍隊とは名ばかり、同じ結末を迎えることになる。
未来ある若者の死を想うと辛い。これが戦争なのだ、と私はため息を漏らした。
じりじりと距離を詰める義勇軍、そろそろ会敵するだろうか。私は思わず目を逸らした。
数分後、私は目を疑うことになる。重歩兵隊、軽騎兵隊…いや、まだ居る。
続々と敵の位置が炙り出され、布陣が明らかになった。
すっかり諦めていた私は慌てて部下に支援の号令を出した。
義勇軍が敗走した敵の指揮官を仕留めた。虚を突かれた敵は混乱したようだ、明後日の方向に隊列が向いている。
敵本隊など状況も忘れて逃走している。
続けざまに砲兵隊も弾を当てたようだ。もちろん私も部下に混じりロングボウを引き絞る。

私は何時もは無口な方だが、その日の夜はたまらず義勇軍の指揮官の青年に声をかけた。
「一体どうやった?」
「地下の迷宮じみた通路から少数の囮舞台を送り込んだのさ。あの辺りの地形は頭に入ってるんでね」
その手には古ぼけ半ばから断ち切られた古い剣が握られていた。


18:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:04:01.07ID:7DMiwiCeM

一千年後の覚醒ののち七日たってフルハタの疲労はすっかり回復し、この棺桶に入ったときのことが、まるで昨日のように思われるのであった。まったく一千年というものを、よく眠ったものであった。
だが、果して一千年を眠りつづけたか。それは壁にかけられているラジウム時計が、ちゃんと保証をしていてくれる。この時計は、ラジウムがたえざる放射によって崩壊する状態を測定し、それによってこの永い年数が自記せられるようになっていた。フルハタは起きあがった最初に、その時計の前にとんでいって、経過時間を読んだ。これによると、一千年よりもすこし眠りすぎていた。時計の読みは、一千年と百六十九日目になっており、紀元でいうと三千六百年の冬二月に相当している。つまり百六十九日だけ、この棺桶機械は誤差を生んだわけである。だがそれにしても一千年に対し百六十九日の誤差であるから大した誤差ではない。ことに、彼フルハタが冷凍状態において、完全にその生命を一千年後にまで保つことができたので、その機械の優秀さは充分にほめていいだろう。
ただこの上の不安は、一千年後になって、この棺桶を外から叩く者がなければならないのであるがそのノックの音がまだ聞かれないことだった。仕様書によると、この厳重な一千年不可開の棺桶は、外から開くのでなければ、絶対に開かない仕掛けになっていたのである。棺桶の構造を堅牢にするうえからいって、どうしてもそのようにするよりほか道がなかったのだ。
「どうしたのだろう。眼ざめるのが百六十九日もおそかったものだから、扉をあけに来てくれる者がどこかに旅行にでも出かけてしまったのではなかろうか」



20:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:04:42.35ID:7DMiwiCeM

裸の女教授
そのときだった。
リリン、リリン、リリーン。
警鈴が、とつぜん冴々とした音響をあげてひびき、密室内の空気をぱっと明るくした。
「あっ、来たぞ、来たぞ、ついに来たのだ。棺桶の蓋を叩いている者がある」
棺桶の蓋を叩けば、この警鈴がリーンと鳴る仕掛けになっていたのだ。さあ助けられるのだ。それにつづいて、ひどい震動が伝わってきた。いよいよこの棺桶が開かれるのだ。
昂奮がややおちついたとき、フルハタは、いったい誰がこの棺桶を開きにやってきたのかと、そのことにはげしい好奇心をわかした。それは、いよいよ彼のいる密室の扉がひらかれるというその直前に迫って、いっそうはげしさを加えた。
どーんと扉がひらいたとき、小暗い外から一人の人間がとびこんできた。
「あっ」
と、フルハタは、途方もない大きなこえをだした。それは非常な愕きのこえであった。彼の目がとらえた再生後はじめてのこの訪問者は、素裸であったからだった。それは文字どおりの素裸であった。しかもこの訪問者は、一目でそれと分る妙齢の婦人だったのである。フルハタは、羞恥でまっ赤になった。だが、この婦人は、顔を赤らめるどころか、いたって平気でフルハタの前に立った。
「フルハタ助教授。そうですね」
「そうです。フルハタです。扉をあけてくだすってありがとう」
「一千年前の世界に住んでいた一人類を、こうして発見したことはわたしのたいへん悦びとするところです。わたしは、あなたの記録を、百九十九区の防空劃を壊しているうちに発見したのですが、長い不錆鋼鉄管のなかに入っていました」
「ああ、そうでしたか」
といったが、かつて友人たちが彼の埋没記録をそんなふうにして二百本の厳重な筒におさめ、方々の地下に埋めたり、また博物館に陳列してくれたのをおぼえていた。


21:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:04:49.95ID:J3cQbFMUa

3
3








22:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:05:16.40ID:7DMiwiCeM

「で、あなたの名は、なんとおっしゃるのですか」
「わたしのことですか。わたしはハバロフスク大学の考古学主任教授のチタです」
「えっ、主任教授! 失礼ながらそんな若さで、主任教授とは、たいへんなものですね」
私は率直に愕きをのべると、チタ教授は笑って、
「ほほほほ。なにが若いことがありましょうか。今年で九百三回日の誕生をむかえるのですよ」
「えっ、するとあなたは九百三歳なのですね。それはとても信じられない」
まだ十九か二十の溌刺たる女性の四股をもちながら、それで九百三歳とは、首肯しかねる。第一、そんな長寿者がいるものだろうか。
「ほほほほ。そんなことをおっしゃると、わたしはたいへん愉快ですわ。千年前の人類が、どんな知能程度だったかということが、いまはっきり目の前に見えるようで、たいへん参考になります」と、しきりにひとりで悦びつつ、「ですけれど、わたしばかりが悦んでいないであなたのため、早く一千年後の今日の世界はどんなになっているかその常識をつけてさしあげましょう」
といって、チタ教授が、金髪をなでながら話をしたことによると、なんでも人類は、今から九百年前に、死の神を征服したという話だった。つまり人類は、死ななくてもよくなったのだ。なんという大発見であろう。
なぜ、そんなことになったかというと、人体に関する生理学の研究が進歩して、いっさいの病気が電気学によって診断され、そして電気的療法で癒ることになった。心臓の悪い人間は、すぐ代用心臓にとりかえることができる。血圧の高い人間は、半日ぐらいかければ、すっかり血管をとりかえることができる。だから、もし死ぬのがいやなら、決して死なないのである。
それでも、このおどろくべき医学の進歩がおこなわれた当時は、代用臓器がたいへん高価であったし、そして金属で作った関係上、相当に重く、ために代用臓器を装置した人間は、やむをえず歩くことができなくなった。


24:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:05:43.00ID:XoeEsZH9F

同時に2つの小説を読み進めてんだけどどこでクロスすんだ?


25:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:06:00.54ID:OoJKkZ+2a

大型肉食恐竜型ハンターは、小型獣型ハンターに振り向いて大きく口を開けて吠える。
まるで獲物の邪魔するなと言われているようで、攻撃を止めて戸惑う小型獣型ハンター。
小型獣型ハンターは大型肉食恐竜型のハンターに牙を向けて威嚇したり、吠えて威嚇している。
大型肉食恐竜型ハンターはぶるぶると頭を振って小型獣型ハンターを片足で踏み潰す。
大型肉食恐竜型ハンターに踏み潰された小型獣型ハンターは頭を上げて吠え、頭が地面に突く。
小型獣型ハンターの紅い眼が点滅して消え、小型獣型ハンターからばちばちと火花が散っている。
大型肉食恐竜型ハンターがオレに襲い掛かろうとしている小型獣型ハンターを銜えて放り投げ、口の中の砲口が伸びてキャノン砲で小型獣型ハンターを撃つ。
小型獣型ハンターが空中で身体を起こすのも虚しく空中爆発する。
大型肉食恐竜型ハンターは尻尾で小型獣型ハンターを薙ぎ払い、口の中の砲口からキャノン砲で小型獣型ハンターを撃っている。
小型獣型ハンターが大型肉食恐竜型ハンターと戦っている。


26:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:06:34.98ID:7DMiwiCeM

それを聞くと、チタ教授は、フルハタの頭脳の古さのなんと気の毒なことよといわんばかりににっと笑い、
「フルハタさん。外科手術なんて九百五十年前にすっかり技術を完成し、傷がつかないようになりましたのよ。だが、わたしの身体に傷痕のないのは、昔の外科手術のおかげというようなもののおかげではなく、これは人造皮膚をつけているから、傷痕がないのです」
「えっ、人造皮膚というと」
「つまり人造肉と似たようなものです。人造なんですから、いつでもこれをばりばりと破って、新しいのと貼りかえられます」
「ははあ、そうでしたか」
といったが、フルハタは唖然とした。さっきから、このチタ教授の素裸を見て、こっちが顔を赤らめていたわけだが、人造皮膚なら羞かしくないのはもっともだ。
「じゃ、失礼ながら、今のあなたの身体というものは、昔、母体から生れて大きくなったあなたの本当の身体とは、大部分違った別物なのですね」
「まあ、そういっても、大した間違いではありません」
「昔のままのあなたとしてのこっているのは脳髄と骨格と顔かたちとだけじゃないのですか」
「いや、そうではありません」
「じゃ、もっと残っているものがありますか」


27:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:07:05.94ID:7DMiwiCeM

それを聞くと、チタ教授は、フルハタの頭脳の古さのなんと気の毒なことよといわんばかりににっと笑い、
「フルハタさん。外科手術なんて九百五十年前にすっかり技術を完成し、傷がつかないようになりましたのよ。だが、わたしの身体に傷痕のないのは、昔の外科手術のおかげというようなもののおかげではなく、これは人造皮膚をつけているから、傷痕がないのです」
「えっ、人造皮膚というと」
「つまり人造肉と似たようなものです。人造なんですから、いつでもこれをばりばりと破って、新しいのと貼りかえられます」
「ははあ、そうでしたか」
といったが、フルハタは唖然とした。さっきから、このチタ教授の素裸を見て、こっちが顔を赤らめていたわけだが、人造皮膚なら羞かしくないのはもっともだ。
「じゃ、失礼ながら、今のあなたの身体というものは、昔、母体から生れて大きくなったあなたの本当の身体とは、大部分違った別物なのですね」
「まあ、そういっても、大した間違いではありません」
「昔のままのあなたとしてのこっているのは脳髄と骨格と顔かたちとだけじゃないのですか」
「いや、そうではありません」
「じゃ、もっと残っているものがありますか」


28:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:07:10.59ID:ryptx5h5a

は?聖女様の続きはよ


29:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:07:26.59ID:7DMiwiCeM

「いや、その反対です。いまあなたのおっしゃった顔かたちも別物です。正直なことをいうと、わたしは生れつきあまり美人ではなかったのです。額はとびだし、眼はひっこみ、口は大きく、鼻は曲っていました。そこでわたしは、すっかり顔をとりかえて[#「とりかえて」は底本では「とりかええて」]もらいました。顔のカタログをみて、そのうちで一等好きな顔に直してもらったのです。顔の美醜ほど、昔人類を悩ましたものはありません。だが考えてみると、あの頃の人間も知恵のない話でした。顔の美醜とは、いわゆる顔を構成している要素であるところの眼や眉や鼻や唇や歯の形とその配列状態によって起るのです。眼がひっこんでいるのなら、そこに肉を植えればいいのです。そんなことは大した手術ではありません。ことに人造肉や人造皮膚ができてから、醜い人間はどんどん顔を直して、美男美女になってしまいました。これから街へ出てみましょうか。きっとあなたは、ただの一人も醜男醜女をも発見できないでしょう」
「おお、――」
といっただけで、フルハタは、あとにつぐべき詞を知らなかった。人間の美醜は三万年の人類史を支配したようなものだと思っていたが、今はいくらでも顔をかえられるようになったときいて歎息するよりほかなかった。


30:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:07:42.32ID:ryptx5h5a

聖女様の続き見たことないんや


31:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:07:59.67ID:7DMiwiCeM

火星との戦争
いよいよフルハタは、棺桶から外に足を踏み出すときがきた。大地を歩くなんて、一千年以来のことだと思うと、じつに感慨無量であった。
外へ出てみると、そこは掘りかけたトンネルのようなところだった。そばを見ると、一本の水鉄砲のようなものが転がっている。
「これは何ですか」
とフルハタが訊くと、
「これは孔をあける器械です。土でもコンクリートでも鉄壁でも、かんたんに孔があきますわ。その洞穴になっているところ、さっき三十分あまりかかって、わたしが掘ったのよ」
と、おどろくべきことをチタ教授はいった。フルハタは、嘘かと思ったが、その水鉄砲みたいな器械は、原子崩壊による巨大なるエネルギーの放出を利用したものであると聞いて、なるほどそうかと思った。
「じゃ、いま動力はすべて原子崩壊からエネルギーを取るのですね」
と訊くと、教援はそうだとこたえて、なんだそんな古いことを聞くといわんばかりの顔をした。
洞穴から外へ出てみると、かつて科学雑誌に出ていた一千万年後の世界という絵そっくりの街があらわれた。まず目についたのは、路が縦横上下に幾百条と走っていることであった。このおびただしい道路は、一つとしてフルハタの知っている道路のように十文字に交叉していなかった。いずれも上下にくいちがっているので、横断などというようなことがなく、どこまで行っても、信号で停められるといったようなことがない。


33:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:08:28.18ID:7DMiwiCeM

さらにおどろいたことは、この道路のうえに、自動車みたいな乗り物が一つも見えないことだ。そして人間が、まるで弾丸のように、しゅっしゅっと走っている。その速さといったら、たいへんなものである。
「ずいぶん、あの人たちは、駈けだすのが速いですね」
とフルハタが赤毛布のような歎息をはなつと、チタ教投はまたほほほと笑って、
「ちがいますよ、フルハタさん。あれは人間が駈けだしているのではなくて、道路が動いているのです。昔の道路は、じっと動かないで、そのうえに自動車だとか列車とかが走っていたそうですね。今の道路は、いずれも皆、快速力で動いているのです。人間がその上にのれば、どこまででも搬んでくれます」
「道路が動くなんて、たいへんな仕掛けだ。動力だけ考えても、ちょっと算盤がとれまいし、第一資源が……」
というと、チタ教授はそれをさえぎって、「いや、今の世の中には、エネルギーはいくらでもあるのです。物質をこわせばいくらでもエネルギーはとれるのです。しかも昔とは比較にならぬ巨大なエネルギーなんです。そんなことは心配いりません」
フルハタは、なるほどと感心した。動力の心配のいらない世の中になったのだ。人類はなんという幸福な日を迎えたのだろう。
そこでフルハタは、一つの重大な質問をチタ教授に向けることを考えついた。
「ねえ、チタ教授。今の世の中でも、戦争はありますか」
「戦争? ええ戦争はありますとも」


35:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:09:15.80ID:ryptx5h5a

あくしろ


36:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:09:17.69ID:7DMiwiCeM

「はあ、なるほど、彗星との衝突ですか」とフルハタはうなずいたが、「それで地球から移民の必要があるんですね。それなら、金星などゆかないで、地球と気候もいちばんよく似た火星へゆかないのはどうしたわけです」
するとチタ教授は、今までにない険しい目をして、フルハタをふりかえりながら、いったことである。
「あなたも古いだけあって頭脳がわるいのね。いま地球の人類は、火星の生物と戦争しているのじゃありませんか。われわれが金星移民を計画したとたんに、火星生物は妨害をはじめたのです。だから移民ロケットも、今までに七パーセントが金星についたばかりで、他の九十三パーセントのロケットは、みんな火星生物のためロケットはやぶられ、人類は惨殺されてしまったのですよ。なにしろ火星の生物の方が、悪がしこいのだから仕方がありません。いや、人類はもっと早く宇宙戦争に対して準備をすすめておくべきだったと思いますわ。地球上の人類だけがこの広大なる宇宙でいちばんかしこい生物だと思っていたのが、たいへんな自惚れなんですからね」
フルハタは、さっきチタ教授が、「戦争はありますわ」といった戦争は、この宇宙戦争を指していたのだと、はじめて気がついた。

おしまい



37:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:09:29.83ID:ryptx5h5a

落ちる!


38:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:09:53.75ID:ryptx5h5a

聖女様完走させるんだよ


39:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:11:00.09ID:ryptx5h5a

あく


40:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:11:13.30ID:7DMiwiCeM

小田原熱海間に、軽便鉄道敷設の工事が始まったのは、良平の八つの年だった。良平は毎日村外れへ、その工事を見物に行った。工事を――といったところが、唯トロッコで土を運搬する――それが面白さに見に行ったのである。
トロッコの上には土工が二人、土を積んだ後に佇んでいる。トロッコは山を下るのだから、人手を借りずに走って来る。煽るように車台が動いたり、土工の袢天の裾がひらついたり、細い線路がしなったり――良平はそんなけしきを眺めながら、土工になりたいと思う事がある。せめては一度でも土工と一しょに、トロッコへ乗りたいと思う事もある。トロッコは村外れの平地へ来ると、自然と其処に止まってしまう。と同時に土工たちは、身軽にトロッコを飛び降りるが早いか、その線路の終点へ車の土をぶちまける。それから今度はトロッコを押し押し、もと来た山の方へ登り始める。良平はその時乗れないまでも、押す事さえ出来たらと思うのである。
或夕方、――それは二月の初旬だった。良平は二つ下の弟や、弟と同じ年の隣の子供と、トロッコの置いてある村外れへ行った。トロッコは泥だらけになったまま、薄明るい中に並んでいる。が、その外は何処を見ても、土工たちの姿は見えなかった。三人の子供は恐る恐る、一番端にあるトロッコを押した。トロッコは三人の力が揃うと、突然ごろりと車輪をまわした。良平はこの音にひやりとした。しかし二度目の車輪の音は、もう彼を驚かさなかった。ごろり、ごろり、――トロッコはそう云う音と共に、三人の手に押されながら、そろそろ線路を登って行った。


41:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:11:27.31ID:ryptx5h5a

すすめえ!


42:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:11:39.55ID:7DMiwiCeM

その内にかれこれ十間程来ると、線路の勾配が急になり出した。トロッコも三人の力では、いくら押しても動かなくなった。どうかすれば車と一しょに、押し戻されそうにもなる事がある。良平はもう好いと思ったから、年下の二人に合図をした。
「さあ、乗ろう!」
彼等は一度に手をはなすと、トロッコの上へ飛び乗った。トロッコは最初徐ろに、それから見る見る勢よく、一息に線路を下り出した。その途端につき当りの風景は、忽ち両側へ分かれるように、ずんずん目の前へ展開して来る。顔に当る薄暮の風、足の下に躍るトロッコの動揺、――良平は殆ど有頂天になった。
しかしトロッコは二三分の後、もうもとの終点に止まっていた。
「さあ、もう一度押すじゃあ」
良平は年下の二人と一しょに、又トロッコを押し上げにかかった。が、まだ車輪も動かない内に、突然彼等の後には、誰かの足音が聞え出した。のみならずそれは聞え出したと思うと、急にこう云う怒鳴り声に変った。
「この野郎! 誰に断ってトロに触った?」


43:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:12:04.56ID:7DMiwiCeM

其処には古い印袢天に、季節外れの麦藁帽をかぶった、背の高い土工が佇んでいる。――そう云う姿が目にはいった時、良平は年下の二人と一しょに、もう五六間逃げ出していた。――それぎり良平は使の帰りに、人気のない工事場のトロッコを見ても、二度と乗って見ようと思った事はない。唯その時の土工の姿は、今でも良平の頭の何処かに、はっきりした記憶を残している。薄明りの中に仄めいた、小さい黄色の麦藁帽、――しかしその記憶さえも、年毎に色彩は薄れるらしい。
その後十日余りたってから、良平は又たった一人、午過ぎの工事場に佇みながら、トロッコの来るのを眺めていた。すると土を積んだトロッコの外に、枕木を積んだトロッコが一輛、これは本線になる筈の、太い線路を登って来た。このトロッコを押しているのは、二人とも若い男だった。良平は彼等を見た時から、何だか親しみ易いような気がした。「この人たちならば叱られない」――彼はそう思いながら、トロッコの側へ駈けて行った。
「おじさん。押してやろうか?」
その中の一人、――縞のシャツを着ている男は、俯向きにトロッコを押したまま、思った通り快い返事をした。
「おお、押してくよう」
良平は二人の間にはいると、力一杯押し始めた。
「われは中中力があるな」
他の一人、――耳に巻煙草を挟んだ男も、こう良平を褒めてくれた。


45:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:12:50.29ID:7DMiwiCeM

竹藪のある所へ来ると、トロッコは静かに走るのを止めた。三人は又前のように、重いトロッコを押し始めた。竹藪は何時か雑木林になった。爪先上りの所所には、赤錆の線路も見えない程、落葉のたまっている場所もあった。その路をやっと登り切ったら、今度は高い崖の向うに、広広と薄ら寒い海が開けた。と同時に良平の頭には、余り遠く来過ぎた事が、急にはっきりと感じられた。
三人は又トロッコへ乗った。車は海を右にしながら、雑木の枝の下を走って行った。しかし良平はさっきのように、面白い気もちにはなれなかった。「もう帰ってくれれば好い」――彼はそうも念じて見た。が、行く所まで行きつかなければ、トロッコも彼等も帰れない事は、勿論彼にもわかり切っていた。
その次に車の止まったのは、切崩した山を背負っている、藁屋根の茶店の前だった。二人の土工はその店へはいると、乳呑児をおぶった上さんを相手に、悠悠と茶などを飲み始めた。良平は独りいらいらしながら、トロッコのまわりをまわって見た。トロッコには頑丈な車台の板に、跳ねかえった泥が乾いていた。
少時の後茶店を出て来しなに、巻煙草を耳に挟んだ男は、(その時はもう挟んでいなかったが)トロッコの側にいる良平に新聞紙に包んだ駄菓子をくれた。良平は冷淡に「難有う」と云った。が、直に冷淡にしては、相手にすまないと思い直した。彼はその冷淡さを取り繕うように、包み菓子の一つを口へ入れた。菓子には新聞紙にあったらしい、石油の※(「均のつくり」、第3水準1-14-75)がしみついていた。
三人はトロッコを押しながら緩い傾斜を登って行った。良平は車に手をかけていても、心は外の事を考えていた。


46:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:13:15.21ID:7DMiwiCeM

その坂を向うへ下り切ると、又同じような茶店があった。土工たちがその中へはいった後、良平はトロッコに腰をかけながら、帰る事ばかり気にしていた。茶店の前には花のさいた梅に、西日の光が消えかかっている。「もう日が暮れる」――彼はそう考えると、ぼんやり腰かけてもいられなかった。トロッコの車輪を蹴って見たり、一人では動かないのを承知しながらうんうんそれを押して見たり、――そんな事に気もちを紛らせていた。
ところが土工たちは出て来ると、車の上の枕木に手をかけながら、無造作に彼にこう云った。
「われはもう帰んな。おれたちは今日は向う泊りだから」
「あんまり帰りが遅くなるとわれの家でも心配するずら」
良平は一瞬間呆気にとられた。もうかれこれ暗くなる事、去年の暮母と岩村まで来たが、今日の途はその三四倍ある事、それを今からたった一人、歩いて帰らなければならない事、――そう云う事が一時にわかったのである。良平は殆ど泣きそうになった。が、泣いても仕方がないと思った。泣いている場合ではないとも思った。彼は若い二人の土工に、取って附けたような御時宜をすると、どんどん線路伝いに走り出した。
良平は少時無我夢中に線路の側を走り続けた。その内に懐の菓子包みが、邪魔になる事に気がついたから、それを路側へ抛り出す次手に、板草履も其処へ脱ぎ捨ててしまった。すると薄い足袋の裏へじかに小石が食いこんだが、足だけは遙かに軽くなった。彼は左に海を感じながら、急な坂路を駈け登った。時時涙がこみ上げて来ると、自然に顔が歪んで来る。――それは無理に我慢しても、鼻だけは絶えずくうくう鳴った。


47:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:13:33.53ID:ryptx5h5a

聖女様つづきないんか


48:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:13:40.32ID:7DMiwiCeM

竹藪の側を駈け抜けると、夕焼けのした日金山の空も、もう火照りが消えかかっていた。良平は、愈気が気でなかった。往きと返りと変るせいか、景色の違うのも不安だった。すると今度は着物までも、汗の濡れ通ったのが気になったから、やはり必死に駈け続けたなり、羽織を路側へ脱いで捨てた。
蜜柑畑へ来る頃には、あたりは暗くなる一方だった。「命さえ助かれば――」良平はそう思いながら、辷ってもつまずいても走って行った。
やっと遠い夕闇の中に、村外れの工事場が見えた時、良平は一思いに泣きたくなった。しかしその時もべそはかいたが、とうとう泣かずに駈け続けた。


50:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:14:04.70ID:7DMiwiCeM

彼の村へはいって見ると、もう両側の家家には、電燈の光がさし合っていた。良平はその電燈の光に、頭から汗の湯気の立つのが、彼自身にもはっきりわかった。井戸端に水を汲んでいる女衆や、畑から帰って来る男衆は、良平が喘ぎ喘ぎ走るのを見ては、「おいどうしたね?」などと声をかけた。が、彼は無言のまま、雑貨屋だの床屋だの、明るい家の前を走り過ぎた。
彼の家の門口へ駈けこんだ時、良平はとうとう大声に、わっと泣き出さずにはいられなかった。その泣き声は彼の周囲へ、一時に父や母を集まらせた。殊に母は何とか云いながら、良平の体を抱えるようにした。が、良平は手足をもがきながら、啜り上げ啜り上げ泣き続けた。その声が余り激しかったせいか、近所の女衆も三四人、薄暗い門口へ集って来た。父母は勿論その人たちは、口口に彼の泣く訣を尋ねた。しかし彼は何と云われても泣き立てるより外に仕方がなかった。あの遠い路を駈け通して来た、今までの心細さをふり返ると、いくら大声に泣き続けても、足りない気もちに迫られながら、…………
良平は二十六の年、妻子と一しょに東京へ出て来た。今では或雑誌社の二階に、校正の朱筆を握っている。が、彼はどうかすると、全然何の理由もないのに、その時の彼を思い出す事がある。全然何の理由もないのに?――塵労に疲れた彼の前には今でもやはりその時のように、薄暗い藪や坂のある路が、細細と一すじ断続している。…………

おしまい


51:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:14:42.13ID:ryptx5h5a

聖女様


53:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:15:54.49ID:TmOAhAO7a

なんでノクターンでやらんのか教えたるわ
更新してないのがバレるからや


54:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:16:50.26ID:KWsj2+Zp0

星新一みたいやな


55:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:18:54.10ID:+kOSdIkUM

二人の若い紳士が、すっかりイギリスの兵隊のかたちをして、ぴかぴかする鉄砲をかついで、白熊のような犬を二疋つれて、だいぶ山奥の、木の葉のかさかさしたとこを、こんなことを云いながら、あるいておりました。
「ぜんたい、ここらの山は怪しからんね。鳥も獣も一疋も居やがらん。なんでも構わないから、早くタンタアーンと、やって見たいもんだなあ。」
「鹿の黄いろな横っ腹なんぞに、二三発お見舞もうしたら、ずいぶん痛快だろうねえ。くるくるまわって、それからどたっと倒れるだろうねえ。」
それはだいぶの山奥でした。案内してきた専門の鉄砲打ちも、ちょっとまごついて、どこかへ行ってしまったくらいの山奥でした。
それに、あんまり山が物凄いので、その白熊のような犬が、二疋いっしょにめまいを起こして、しばらく吠って、それから泡を吐いて死んでしまいました。
「じつにぼくは、二千四百円の損害だ」と一人の紳士が、その犬の眼ぶたを、ちょっとかえしてみて言いました。
「ぼくは二千八百円の損害だ。」と、もひとりが、くやしそうに、あたまをまげて言いました。
はじめの紳士は、すこし顔いろを悪くして、じっと、もひとりの紳士の、顔つきを見ながら云いました。
「ぼくはもう戻ろうとおもう。」


56:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:19:09.19ID:0GaxLGqNa

どうせ完結してないんやろ


57:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:19:28.11ID:+kOSdIkUM

「さあ、ぼくもちょうど寒くはなったし腹は空いてきたし戻ろうとおもう。」
「そいじゃ、これで切りあげよう。なあに戻りに、昨日の宿屋で、山鳥を拾円も買って帰ればいい。」
「兎もでていたねえ。そうすれば結局おんなじこった。では帰ろうじゃないか」
ところがどうも困ったことは、どっちへ行けば戻れるのか、いっこうに見当がつかなくなっていました。
風がどうと吹いてきて、草はざわざわ、木の葉はかさかさ、木はごとんごとんと鳴りました。
「どうも腹が空いた。さっきから横っ腹が痛くてたまらないんだ。」
「ぼくもそうだ。もうあんまりあるきたくないな。」
「あるきたくないよ。ああ困ったなあ、何かたべたいなあ。」
「喰べたいもんだなあ」
二人の紳士は、ざわざわ鳴るすすきの中で、こんなことを云いました。
その時ふとうしろを見ますと、立派な一軒の西洋造りの家がありました。
そして玄関には
RESTAURANT
西洋料理店
WILDCAT HOUSE
山猫軒
という札がでていました。


58:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:19:58.81ID:+kOSdIkUM

「君、ちょうどいい。ここはこれでなかなか開けてるんだ。入ろうじゃないか」
「おや、こんなとこにおかしいね。しかしとにかく何か食事ができるんだろう」
「もちろんできるさ。看板にそう書いてあるじゃないか」
「はいろうじゃないか。ぼくはもう何か喰べたくて倒れそうなんだ。」
二人は玄関に立ちました。玄関は白い瀬戸の煉瓦で組んで、実に立派なもんです。
そして硝子の開き戸がたって、そこに金文字でこう書いてありました。
「どなたもどうかお入りください。決してご遠慮はありません」
二人はそこで、ひどくよろこんで言いました。
「こいつはどうだ、やっぱり世の中はうまくできてるねえ、きょう一日なんぎしたけれど、こんどはこんないいこともある。このうちは料理店だけれどもただでご馳走するんだぜ。」
「どうもそうらしい。決してご遠慮はありませんというのはその意味だ。」
二人は戸を押して、なかへ入りました。そこはすぐ廊下になっていました。その硝子戸の裏側には、金文字でこうなっていました。

「ことに肥ったお方や若いお方は、大歓迎いたします」


60:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:20:31.81ID:+kOSdIkUM

二人は大歓迎というので、もう大よろこびです。
「君、ぼくらは大歓迎にあたっているのだ。」
「ぼくらは両方兼ねてるから」
ずんずん廊下を進んで行きますと、こんどは水いろのペンキ塗りの扉がありました。
「どうも変な家だ。どうしてこんなにたくさん戸があるのだろう。」
「これはロシア式だ。寒いとこや山の中はみんなこうさ。」
そして二人はその扉をあけようとしますと、上に黄いろな字でこう書いてありました。
「当軒は注文の多い料理店ですからどうかそこはご承知ください」
「なかなかはやってるんだ。こんな山の中で。」
「それあそうだ。見たまえ、東京の大きな料理屋だって大通りにはすくないだろう」
二人は云いながら、その扉をあけました。するとその裏側に、
「注文はずいぶん多いでしょうがどうか一々こらえて下さい。」
「これはぜんたいどういうんだ。」ひとりの紳士は顔をしかめました。
「うん、これはきっと注文があまり多くて支度が手間取るけれどもごめん下さいと斯ういうことだ。」
「そうだろう。早くどこか室の中にはいりたいもんだな。」
「そしてテーブルに座りたいもんだな。」


61:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:21:05.27ID:+kOSdIkUM

ところがどうもうるさいことは、また扉が一つありました。そしてそのわきに鏡がかかって、その下には長い柄のついたブラシが置いてあったのです。
扉には赤い字で、
「お客さまがた、ここで髪をきちんとして、それからはきもの
の泥を落してください。」
と書いてありました。
「これはどうも尤もだ。僕もさっき玄関で、山のなかだとおもって見くびったんだよ」
「作法の厳しい家だ。きっとよほど偉い人たちが、たびたび来るんだ。」
そこで二人は、きれいに髪をけずって、靴の泥を落しました。
そしたら、どうです。ブラシを板の上に置くや否や、そいつがぼうっとかすんで無くなって、風がどうっと室の中に入ってきました。
二人はびっくりして、互によりそって、扉をがたんと開けて、次の室へ入って行きました。早く何か暖いものでもたべて、元気をつけて置かないと、もう途方もないことになってしまうと、二人とも思ったのでした。


62:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:21:58.93ID:+kOSdIkUM

扉の内側に、また変なことが書いてありました。
「鉄砲と弾丸をここへ置いてください。」
見るとすぐ横に黒い台がありました。
「なるほど、鉄砲を持ってものを食うという法はない。」
「いや、よほど偉いひとが始終来ているんだ。」
二人は鉄砲をはずし、帯皮を解いて、それを台の上に置きました。
また黒い扉がありました。
「どうか帽子と外套と靴をおとり下さい。」
「どうだ、とるか。」
「仕方ない、とろう。たしかによっぽどえらいひとなんだ。奥に来ているのは」
二人は帽子とオーバーコートを釘にかけ、靴をぬいでぺたぺたあるいて扉の中にはいりました。
扉の裏側には、
「ネクタイピン、カフスボタン、眼鏡、財布、その他金物類、
ことに尖ったものは、みんなここに置いてください」
と書いてありました。扉のすぐ横には黒塗りの立派な金庫も、ちゃんと口を開けて置いてありました。鍵まで添えてあったのです。


63:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:22:05.79ID:1F69RYMcd

イッチなんでガイジに粘着されてるんや


64:なんJゴッドがお送りします2020/11/21(土) 16:22:43.97ID:+kOSdIkUM

「ははあ、何かの料理に電気をつかうと見えるね。金気のものはあぶない。ことに尖ったものはあぶないと斯う云うんだろう。」
「そうだろう。して見ると勘定は帰りにここで払うのだろうか。」
「どうもそうらしい。」
「そうだ。きっと。」
二人はめがねをはずしたり、カフスボタンをとったり、みんな金庫のなかに入れて、ぱちんと錠をかけました。
すこし行きますとまた扉があって、その前に硝子の壺が一つありました。扉には斯う書いてありました。
「壺のなかのクリームを顔や手足にすっかり塗ってください。」
みるとたしかに壺のなかのものは牛乳のクリームでした。
「クリームをぬれというのはどういうんだ。」
「これはね、外がひじょうに寒いだろう。室のなかがあんまり暖いとひびがきれるから、その予防なんだ。どうも奥には、よほどえらいひとがきている。こんなとこで、案外ぼくらは、貴族とちかづきになるかも知れないよ。」
二人は壺のクリームを、顔に塗って手に塗ってそれから靴下をぬいで足に塗りました。それでもまだ残っていましたから、それは二人ともめいめいこっそり顔へ塗るふりをしながら喰べました。




元スレ:https://swallow.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1605941964/
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